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異文化アジリティを有するリーダーの識別

パート1

By: Phil Johnston

私たちはこれまで、グローバルに展開する企業を顧客として、世界中で広範なサービスを提供してきました。そうした経験を通して、国境を越えてアサインされたリーダーの成功および失敗の主な原因についても、その知見を深めています。

加えて、この度、海外でのリーダーという役割にうまく順応できた25人のグローバルリーダーへのインタビューを通して、多くの共通した示唆を得ることができました。キーワードは、「異文化アジリティ」です。

そこで本稿では、1)異文化アジリティを有するリーダーをどのように識別するか、2)会社と個人の双方が、クロスボーダーでの任務およびその後の長期的な成功をいかに確かなものとするか、について考察します。

なお、本稿では、「異文化アジリティ」を、異なる文化的文脈や環境において、異なる文化的背景からなる人々と効果的に仕事をすることができる能力として定義しています。


多くのグローバル企業は、現地の人材の登用・採用を優先しようとするが、特にリーダー人材に関して言えば、現実には他の国・地域から配置する必要性がそれなりに残っている。必要なマネジメント経験を持つローカル人材が限られているケースや、CEOと取締役会が海外でのマネジメント経験を積ませることによって次世代リーダーを育成したいと考えるケースなどだ。

ここで問題なのは、たとえその人材が自国ではトップパフォーマーであったとしても、必ずしも他国でのリーダーの役割に適しているとは限らないという点だ。そのため、間違った人選をして送り出すと、会社の不利益になるのはもちろん、当人の経歴にも傷がつき、その家族にとっても不愉快な状況になってしまいかねない。

人事部門のリーダーの方々との議論を通して、またグローバルリーダー人材についての研究によって、私たちは、ローカルリーダーのミスマッチが引き起こす問題の多くが、重大事故を引き起こすまで本社の人事部門やトップマネジメントに届かず、そのミスマッチを大きなリスク要因として認識した時点では、「時すでに遅し」となっているということを学んだ。

そうした場合、そのリーダーのその後はどうなるかと言えば、当然、その任を解かれ、本国に戻されたり、別の部署に転任となるわけだが、多くの場合、自身の意志で会社を去ることとなってしまうようだ。失地回復は難しいわけで、会社としては優秀な人材を失ってしまうことになる。

そうした、ミスマッチによる悲劇を未然に防ぐために、つまりはリーダー人材の海外駐在を成功させるために、会社としてはどのような手を打つことができるだろうか。

弊社は、国内外のエグゼクティブ・サーチ案件を通してさまざまなリーダーのアセスメントに携わる中で、海外アサインメントに非常によくマッチした人と苦労した人についての明確なパターンを見出すことに成功した。クロスボーダーのアサインメントに成功したリーダーたちは、高い「異文化アジリティ」を有しているのだ。

海外赴任で成功しているリーダーたちとのインタビューでは、会社が下記の例を含めて、ある一定の手順をとっているときに海外アサインメントが最も成功していることが明らかとなっている。

  • 異文化アジリティの高い人に共通に見られる能力を理解する。
  • 異文化アジリティの高さに基づいて選出する。
  • 期待値を明確に定義して、リーダーのアサインメントへの移行および継続的な育成のための計画を作成する。

異文化アジリティの5つの特徴

グローバル企業のマネジメントは、その経験から、リーダー人材の一部が文化的、個人的あるいはキャリア上の問題から、海外アサインメントに適していないことを痛感している。

対象者の強みと弱みを把握することはもちろん重要なのだが、有力な候補者を同じように適格な候補者の中から選出するための一貫した方法は存在しない場合のほうが多い。しかも、そもそも選出に人事部門を関与させている企業は少なく、多くの場合、当然、正式なインタビューは行うものの、本稿で重視する異文化アジリティを勘案するための一貫性のある基準は用いられていない。なかには、単に本人に現地を訪問させ、居心地がどうだったかを報告させているだけという極端な例もあるほどだ。

リーダー選定にはさまざまなアプローチがある中で、弊社の研究では、異文化での成功した実績を持つリーダーの間に共通する5つの能力が特定されている。

1. 好奇心とオープンさ

存分な好奇心があり、オープンなリーダーは、その場に順応しようとし、よく学び、そして、どのような場合であっても成長しようとする強い意志を失わない。

たとえば、彼らは「なぜすべての北欧諸国の国旗は、異なる色で同じパターンなのか?」「お盆休みとは、一体どのような休みか?」など、その国の文化や常識について知りたがる。

逆にそうした特性の薄い人たちは、単に、以前の環境と今いる場所を比較し、いろいろと知りたがるのではなく、「クラクションの音が好きになれない」とか「ここの気候は寒すぎる」といった、どちらかと言えば決めつけ、つまりは文句や愚痴に終始する。

好奇心にあふれる多くのリーダーは、若い時から旅をして、たくさんの人と出会い、視野を拡げている。彼らはまた、文化間の違いを訝しんだり、嫌がるのではなく、むしろ喜ぶ傾向があり、同時に異なる文化的パラダイムの中で働ける知的能力を有する。

あるリーダーからは、「違いを認め、学び取ることに純粋に興味を持っている姿勢を見せることが重要で、外国文化のニュアンスの違いを語れる専門家である必要はない」という意見が聞かれた。

海外に新しく送り出すリーダーを選出する際に、他の能力よりも好奇心が旺盛かどうかということの方により大きな評価基準を置いたほうがいい場合すらあるのだ。

別のリーダーからは、次のような事例を聞くことができた。中国ビジネスにおける重要ポストに当てる人材を決定する際に、経験は豊かだが自信過剰な候補者よりも、謙虚に自己認識をしていて、中国という国に高い好奇心を持っている候補者を選んだというのだ。実際、初めのインタビューにおいて、彼の鞄から中国関係の本が文字通りこぼれ落ちたそうだ。

「1年目は、私は最悪の判断をしたのだと正直後悔し始めていました。明らかに彼は苦労していて、頻繁にコーチングが必要だったのです。ところが、彼はめげることなくよく学び、成長しようという努力を怠りませんでした。18カ月が経った頃には、彼を選んだ私の判断は間違っていなかったと自信を持つことができました。いや、それどころか、それまでの私の選択の中で、彼は最高のリーダーとなってくれたのです。まさにスター経営者になったのです」

2. 冒険心と責任感のあるリスク・テイク

異文化アジリティを持つリーダーは、旺盛な好奇心を発揮して、情報を収集するだけでなく、それまでの経験が培ってきた常識の殻を破り、それまでの人生では思いもよらなかったような体験をすることを好む傾向がある。

そのため、こうした特性を持つグローバルリーダーの多くは、本社での仕事は役割が狭められ、官僚主義的であるように感じられ、本社に戻りたがらないということもしばしば起こる。

今回インタビューしたリーダーの一人は、シンガポールでの成長期に、居心地のよい中国人どうしの仲間グループを抜け出して、近所に住む異国からの友人との交友を深めた。その後、あるコンサルティング会社のカナダ地域のマネージング・ディレクターとなり、リスク・テイクする若手コンサルタントを見出すことに力を注いだ。

彼は、若手に国際的なプロジェクトを経験することで、グローバルに活躍できるパートナーへの道を歩むことを助言していた。半分は、そうしたチャレンジングなプロジェクトに意欲を燃やし、残る半分はカナダの国境に近い米国の都市での短期のプロジェクトを選んだり、そうしたチャレンジを先延ばしにした。その結果、異国に飛び出していったコンサルタントのほうが、リスク回避型のコンサルタントよりもはるかに高い確率でグローバルコンサルタントとして頭角を現したと言う。

3. 自己認識と異文化適応性

己を知るリーダーは、自分の行動が他人に与える影響に敏感であり、たとえ現地の社会規範に明るくなくても、その性格が故に現地に適応することができる。彼らは、他の人にアドバイスを求め、または現地の人々に受け入れられている社会的慣行をよく観察し、学習することに多くのエネルギーを費やしている。つまりは、場に学ぶ姿勢を貫いているのだ。

優れた自己認識と適応性を持つリーダーは、そうした能力を欠いている人よりもより上手に人を引きつけ、組織をリードすることができる。

あるリーダーは、4つの大陸で働き、こうした特性を発揮し続けた。彼は以前にWomen’s Tennis Association (WTA)のツアーのリーダーだったことがある。あるときドバイ政府がドバイオープンに参加するイスラエルの女子テニス選手のエントリーを許可しないという場面に遭遇した。異文化を語る場合に典型的な、極めて難しい状況と言えよう。

イスラエル当局は、ボイコットを勧めもしたが、彼はその短絡的な考えに否定的だった。「それまで現地で働いた経験に基づいて、私は圧力をかけることは確かに一つの有効な手段ですが、さりとて、相手を追い詰めすぎては何も得られないと思っています。海外での経験によって、私はより相手側の意見を傾聴することに重きを置くようになっていましたし、それによってより多くの洞察力を得ることができたと感じていました」

彼はトーナメントへの参加を続行、当該の選手にはトーナメントの参加を辞退させた。彼は参加選手たちを勇気づけ、トーナメントを差別に対する抗議の場とさせたのだ。優勝杯を手にしたビーナス・ウィリアムスはテレビでドバイの行為を非難した。また彼が間に入って、ドバイオープンはWTA史上最高額の罰金を課され、トーナメント継続のために200万ドルの保証金が必要となった。ドバイ政府は翌年に方針を変更し、イスラエル選手の参加を認めた。この功績により、彼は2013年のAnti-Defamation League’s Americanism Awardを受賞した。

4. 文化についての知識

その国の特定の文化についての知識は、異文化アジリティの大切なもう一つの要素であり、時間をかけて蓄積するしかないが、好奇心によってその過程を加速することは可能だ。ただ注意を要するのは、文化的な知識が完全に異文化アジリティの他の側面の欠如を補えるわけではないということだ。

その国の文化についての知識は、最初の海外駐在においては低いのが普通だ。

ただし、一部のリーダーは、子どものときから海外に住んでいたり、移民二世として育てられたり、または外交官の家庭、あるいは駐屯地で育ったというような強力な土台を有している。

確かに、しっかりとした教育を受けることで文化的な知識を補うことはできるが、その文化の中に浸かって学ぶほうが、ストレスもかかるが、はるかに効果的であることは間違いがない。

文化的知識が豊富なリーダーは、異なる社会的慣習、ドレスコード、さまざまな宗教観や祝日の意味を知っていて、現地の言葉にも通じている。興味深いのは、インタビューした人たちの大半は、外国語の流暢さは異文化アジリティと相関していると感じているため、新しくその地に赴任するに際して、(慌てて)現地の言葉を習得するというのは現実的ではないと思っていることだ。

英語はビジネスの共通言語であるため、ビジネスを成功させるためには、ほとんどの国においては、英語を正しくわかりやすく平易に話せれば十分だ。コミュニケーション力のアップは、むしろ社会的階層の理解や正しい紹介の仕方などを含め、非言語的な知識や慣れに負うところが大きい。

5. 状況的な要因

仕事と家庭生活との間の境界線は、海外赴任ではより曖昧になり、双方の影響度が高くなるものだ。つまりは、仕事上の意思決定においても家族の影響が大きい。なかでも配偶者の役割を過小評価できない。

もちろん企業は、家族のサポートが得られなくても海外駐在を受け入れるように候補者を会社の論理で説得することはできるが、これは間違いだ。個人的なニーズの充足と支援システムの確立は、グローバルリーダーの成功に不可欠だからだ。

考慮されるべき潜在的な課題には、次のような要素が含まれる。

配偶者の異文化アジリティ、子どもを養育する上でのニーズ、好みや教育上の要件、介護の必要性、引っ越しに伴う諸問題、健康上の考慮事項、そして長期的なキャリアや個人的な目標などである。

上司もしくは人事部門には、海外アサインメントの前に、赴任者の配偶者の声も直接聞くことをお勧めしたい。私たちが話したリーダーたちの中には、海外駐在がその家族にもたらす影響を理解するための手段として、夫婦で夕食をとりながら話し合うことを勧める人もいた。

時として、配偶者の異文化アジリティが高く、リーダーの不得意な面を補うという場合もある。ある経営者は、上海に送ろうとしているリーダーの能力にいささかの疑問符があったときのことを話してくれた。

それでも、そのリーダーは赴任を強く望んだので、異文化への適応力を測るアセスメントプログラムを彼と奥さんの両方に受けさせたそうだ。その結果、彼の点数は平均値だったが、奥さんの結果は過去最高だった。そこで、夫婦を上海に転勤させることを決心したのだが、2人はその後15年間にわたり、公私にわたって現地に適応した。この経営者は、この成功はひとえに奥さんの高い異文化アジリティのおかげだと考えている。

時として会社は、個人的な課題を抱えているリーダーを海外に送って本国から距離を置かせることによって、その人が立ち直り、再び仕事に打ち込んでもらえるのではないかという考えにつられる。

ある経営者は、こうした作戦が失敗するのを何度も見てきたと言う。

「海外駐在においては、現地の文化に敬意をもって向き合わなければなりませんが、それには、とてつもない労力とエネルギーを要します。間違った理由で海外に送られるリーダーは、たとえ距離によって癒やされたとしても、その過程で往々にして、さらに会社から気持ちが離れていくものです」

海外アサイメント後の処遇を明確にすることの重要性

会社は、海外アサインメントにおける本人の役割と、長期的なキャリアにそれがどう影響するかについて、明確にしておく必要がある。

と言うのも、当事者は、海外アサインメントが終われば本社での昇進が待っていると期待してもおかしくないからだ。しかし、帰国時に適切なポジションがないという可能性もある。海外アサインメントから戻った人たちが必ずしもキャリアアップしていないという状況が続けば、海外駐在はキャリア上のリスクと感じさせてしまう可能性もある。キャリア上の重要なステップではなく、キャリアコースから外れた人とさえみなされるかもしれない。

「海外アサイメントの社内公募が、昇進のための階段の一つとみなされるようになるのは避けるべきです。むしろ、異文化の世界に飛び出すことが、より視野が広く、面白みがあり、適応力の高い人間になるための個人的なチャレンジになるという期待を膨らませるべきだと思います」(元中国ビジネスのCEO)

という意見はあるものの、海外アサインメントは実際、キャリア形成にも役立つし、他のメンバーへのロールモデルともなる。ある広告代理店グループの経営者は、1990年に彼の顧客であるP&G社が、163年の歴史の中で初めて海外経験のあるリーダーをCEOにした後には、誰もが海外アサインメントを希望したと教えてくれた。

「異文化アジリティ」は、強固な土台

適切なリーダーを見つけることは、そもそも簡単な話ではない。ましてや海外へのアサインメントに際しては、ますます話は複雑になり、最適解を見つける作業は困難を極める。だからこそ、成功する可能性の高い条件を見つけることが非常に重要なはずだ。本稿で重視する「異文化アジリティ」は、その条件に値する。このキーワードを十分に理解し、その評価基準を確立することこそ、海外アサイメントを成功に導く強固な土台になると信じる。

会社と個人の双方がどのように長期的に「異文化」を実現できるかを探るパート2

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