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変革型デジタルリーダーに求められる7つの特性

日本のEコマース市場が成長を続ける中で、小売業は絶え間なくデジタル化戦略を推し進めている。そのため、デジタル化をキーワードとした変革の推進に資するリーダーの採用ニーズが日に日に高まっている。

では、変革力のあるデジタルリーダーになるために必要な要素はなんであろうか? デジタルリーダーを外から招聘する際には、候補者にどのような特性を求めるべきなのか?

それを探るべく、Eコマース業界における自社のポジションを確立するために、どのような特性が必要であったかについて、成功したデジタルリーダーたちにインタビューした内容をご紹介する。

1. ビジョンを持つ

デジタル化は、組織内のすべての機能を変革する。成功したデジタルリーダーたちは、変革がどのようなものになるかについての明確な、そして幅広いビジョンを持っていた。

「EコマースをPOSシステムの一形態としてだけ、あるいはツールのひとつとしてとらえてはいけません。Eコマース業務のリーダーにおいても、全社的ビジョンの共有が最も重要な責務となるからです。この核心部分をおろそかにしたら、変革の成功はおぼつかないでしょう」(外資系スポーツメーカーのシニアデジタルリーダー)

別のインターネット企業の幹部の言葉を借りれば、これは「Eコマースが組織全体の戦略にどう組み込まれるべきかを思い描く」ということなる。

「会社の目標を理解し、そのためにEコマースがどのように独自のスタイルで貢献できるのかを考察することが重要です」

つまり、Eコマースには単なる販売のデジタル化にとどまらない明確な使命と目的がなければならず、ビジネスのすべての構成要素を考慮しなければならないということになる。

ビジョンがしっかりしていれば、Eコマースは、単なる販売手段よりもはるかに大きなインパクトを持つ。Eコマースサイトは、消費者に、メディアコンテンツとマーケティング活動、インタラクティブなキャンペーンを通して自社のブランドをよりわかりやすい形で提示し、最新の製品やプロモーションについてのニュースを日々提供する。

「小売業者は、Eコマースの役割について入念に検討すべきです。デジタルを統括するリーダーは、Webコンテンツがチャネルを越えて販売を促進するだけでなく、ブランドの認知度を高め、また顧客エンゲージメントを高めることにも利用できると理解する必要があります。もしも最終目標が単に売上を伸ばすということであれば、アマゾンや楽天を通して売るほうがはるかにコスト効率がよいかもしれません。しかし、自前のEコマースチャネルを構築できれば、オウンド・メディア=自社の媒体を作ることとなり、それをプラットフォームとして自社の知見を顧客と共有したり、市場に新たなトレンドを生み出していくことができるのです。それがより確実な顧客のブランド体験につながるわけです」(小売業界のデジタルリーダー)

2. 組織全体に影響を与え、Eコマースへの理解を高め、協働を促す

Eコマースは、組織内のすべての人に影響を与えるようでなければ意味がない。

「Eコマースを成功させるためには、関係者すべてを関与させる必要があります。内部の主導権争いは時間とリソースを浪費するばかりです。そんなことで、協力者を多く失えば、本来の使命の達成などできるわけがありません」(デジタルリーダーの1人)

もっとも、残念ながら、デジタル化に変革に必要なメンバーすべてを関与させることは、特に伝統的な従来型のビジネスモデル企業では容易ではない。

「従来のビジネスモデルの責任者(=オフラインリーダー)たちは、自分たちの売上を奪うライバルとしてEコマースをとらえる傾向があるので、彼らを説得することは簡単ではありません。一方で、現場のメンバーは顧客を理解しているので、デジタルを推進するためにも欠かせません。重要なのは、デジタル化がいかに従来の店舗ビジネスなどにも顧客満足の向上や売上増という形で価値を提供できるかを実証していくことです」(国内小売業のデジタルリーダー)

デジタルリーダーは、組織全体の関係者に対して効果的に影響を与え、彼らの理解を高め、そしてうまく協働できるように仕向ける必要がある。そのためにはまず、Eコマースに対する誤解を解く必要が出てくるが、そこは強硬姿勢を取るのではなく、他者に共感し、社内の政治にも精通し、強いコミュニケーションスキルをもって接することが求められる。

ある高級ブランドのデジタルリーダーは、アナリティクス(WEBアクセス解析ツール)が組織のさまざまな部分に利益をもたらす具体例を説明することによって、Eコマースに対する抵抗を克服した。

「人は往々にして、顧客を真に理解するために有用な個々の指標よりも、全体的な収益の数字に焦点を当てがちです。そこで、店舗、マーチャンダイジング、マーケティング等の各部門が、クリックやコンバージョンのデータ、トラフィックの傾向などが示唆する内容がよく理解できるようにサポートする必要があります」

別の小売企業では、Eコマースのリーダーは、棚にない品物をオンラインで売ることによって店舗スタッフにインセンティブを与えることで、デジタルシステムがいかに店舗の売上を押し上げることが可能かという実例を示した。

組織全体のコラボレーションを有効にするには、デジタルのリーダーは他のメンバーにEコマースの基本を教えることができなければならない。これは、デジタルマーケティングが初期段階のコンセプトである日本では特に重要だ。

「米国では、マーケティングの概念が十分に確立され、デジタルは、その共通の理解の上に始めることができます。しかし日本では、市場自体がまだ揺籃期なのです」(シニアなデジタルリーダー)

いまいる社員たちは、分析、デジタル広告と検索エンジン最適化(SEO)の重要性を理解していないかもしれない。

「まず、デジタル用語を素人にわかる言葉に置き換える必要があります。その上で、大規模な組織にEコマースを浸透させる際には、私はまず、好奇心レベルが高く、新しいことを速く習得できる人を探して、エバンジェリスト(伝道者)として働いてもらうようにしています」(国内小売業のデジタルリーダー)

3. 従来型のビジネスについての知見を持つ

デジタルのリーダーにとっては、従来型のビジネスについての知見を持つことのほうが、固有の技術プラットフォームに明るいことよりも重要である。

技術プラットフォームはめまぐるしく進化し、これまでの技術はすぐに廃れるが、ビジネスの基本は不変だ。

「技術を十分に理解することはもちろん大事です。しかし、もっと大切なのは、売上を上げるためのビジネスの方法論やマーケティングの重要性について理解し、売上の源泉、さらに利益の源泉を微に入り細に入り、把握できることです」(スポーツ小売店のシニアEコマースリーダー)

「会社がどのように運営されているかということや、顧客、サプライチェーンや物流、そして全体的なビジネスモデルを深く理解することも重要です。私自身も、事業側での経験がなければ、現在のEコマースを率いる役割において成功することはなかったと思っています」(日系グローバル小売業のEコマース担当役員)

「Eコマースは、ただのインターネットビジネスではありません。私は、サプライヤーとの交渉や、品質管理、人件費、および供給の効率化などの問題に取り組むことにかなりの時間を費やしています」(国内小売業のデジタルリーダー)

「最高のEコマースのリーダーがテッキー(技術オタク)であることは稀であり、むしろ多いのは、どの分野でも成功できる人が、たまたまデジタルを担当したというケースです」(グローバルなIT企業のデジタル幹部)

4. オムニチャネルのエバンジェリストとなる

消費者の行動は、チャネルを越えて行われる。最近では、多くの若者は店に行って商品を購入する前に、インターネットで価格をチェックするのを習慣化している。あるいは、店頭で品定めをして、家に戻ってからネットで購入するという行動パターンも少なくない。

「それぞれのチャネルが、顧客の購買体験の構成要素となっているわけです」(シニアデジタルリーダー)

「デジタル化をセールスに適用するだけでなく、サプライチェーンや商品開発といったバリューチェーンにも適用しなければ嘘です」(オンラインビジネスのリーダー)

店舗での販売も、インターネットによる販売もシームレスに連携するオムニチャネルが主流となろうとしている。このオムニチャネルの顧客体験をサポートするために、Eコマースは、会員特典やさまざまなポイント、購買情報を含む顧客情報などすべての情報を、店舗や組織の他の部門と統合されなければならない。

「われわれは、顧客がどのような形で弊社と関わろうとも、その顧客にとっての経験を素晴らしいものにするという責任を持っています。私はこれを『エンゲージメントコマース』と呼んでいます。デジタルで顧客とのきずなを作り、次にどこで買うかを顧客に選んでもらうのです。これを可能にするために、従来型のリアル店舗は、私たちのオンラインチームとシームレスに連携する必要があるわけです」(国内小売業のデジタルリーダー)

顧客がインターネットで購入し、店内でピックアップできるようなサービスも始まっている。さらに進んだ小売業者は、店舗スタッフが顧客のために、店にない品物をオンラインで在庫確認し、能動的に顧客にすすめられるようにトレーニングを受けるようにしている。

逆に、オンライン担当者は、リアル店舗の最新状況を押さえている必要がある。それは、データの一元管理だけでは足りない。

「私は、チームのメンバーに、週に一度は違う現場に行き、見て回り、商品を手にし、顧客を観察し、顧客がどういう行動をしているかを自ら体験するようにと言っています。『われわれは、お店で提供しているのと同じような体験をオンラインの顧客に提供しているだろうか?』『もしそうでなければ、何を変えなければならないのか?』という観点で見て回らせているのです」(Eコマースの事業部長)

「私自身の仕事の半分はEコマースですが、残りの半分は他のチャネルに対して違うやり方を見せることです。すなわち、われわれのデジタルの観点からのユニークな見方でこそ見出だせるさまざまなビジネス機会を提示するわけです。私は、自分が単なるEコマース人間ではなく、組織を横串しに調整するリーダー、あるいは『オムニチャネル』人間とみなされることを願っています」(高級ブランドのデジタルリーダー)

5. 変革のための人材を育成する

デジタルリーダーはまた、他のリーダー以上に採用と人材育成に熟達している必要もある。しかし、少なくとも日本では、この点に関してはしばしば困難がつきまとう。

ある高級ブランドのデジタルリーダーによれば、日本におけるグローバル企業のためのデジタル人材には、稀有なスキルセットが必要となる。

「外交的で、ポリティカルな状況をうまくナビゲートでき、小売業を理解し、そしてバイリンガルな人材が必要です。そんな人をみつけるのは至難の技です」

日本の小売業のあるシニアなマーケティングリーダーは、Eコマースはまだ比較的新しいドメインなので、人材プールが非常に小さいと嘆く。さらに、特に伝統的な企業にデジタル人材をひきつけるには、カルチャーとワークスタイルのギャップが課題となる。

「AmazonやGoogleのようなピカピカのブランドネームがなければ、デジタル部門に適した優秀な人材を採用することはとても困難なのです」

とは言うものの、海外から人材を招聘するという方法にも課題がある。

「デジタルリーダーが海外から日本にやってくるとなると、通常はかなりの報酬アップを期待します。それだけの給料を払うことは難しいでしょうし、そもそも、そうした人材を見つけ出し、長期間雇用し続けること自体、極めて困難なことです」

とは言え、社内の他部署から人材を探すことも容易ではない。「他のチャネルから良い候補者を確保するのは実に大変です。彼らはチャネルコンフリクトがあると批判する傾向にあるので、われわれを敵とみなしていて、協力を拒む傾向が強いからです」(グローバルな家電企業のデジタルリーダー)

直面する強い逆風に対して内外の状況をうまく調整しながら、優れた人材を引き寄せ、採用し、育成するという一連のプロセスを辛抱強く遂行する能力と意思があるかどうかが、多くの場合において、デジタルリーダーの成功の要諦となるようだ。

6. アジャイル(機敏)である

ビジネスのあり方は日々変わり、進化しているが、そうした波の多くはデジタルの世界によって引き起こされている。そのためにデジタルリーダーは、流動的でダイナミックな環境において、常に変化の先を読むことが要求される。

「アジリティー(機敏性)が重要です。すなわち、自身のプラットフォームでビジネスを運営する中で、学び、繰り返し試すこと、そこから得られる示唆をリアルタイムでチームに徹底し、常に機敏に対応できるチームビルディングをすることが肝要なのです」(外資系スポーツブランドのリーダー)

「スピード、すなわちアクションサイクルを回し続ける速さがきわめて重要です。朝一番に前日の業績を携帯で受け取り、会社に着いたときにはすでに翌週のアクションプランが出来ている。それが理想です」(元外資系Eコマース会社のデジタルリーダー)

「デジタルリーダーは、チームを育成する必要があり、スピードとともに、過去のガイドラインにとらわれたり、ルールにこだわったり、些細なことに拘泥することなく意思決定できるように鍛える必要があります」(日系小売業のEコマースリーダー)

最高のリーダーであるためは、常に新しいアイデアを試し、限界を跳ね飛ばす一方で、リスクを取って失敗を厭わない情熱を持つ必要がある。

「デジタルの世界では、最新の技術の多くは、まだ使われていないかテストすらされていないものです。だからと言って、もしリスクを避け、新たな可能性に背を向けたら、そのまま置いて行かれてしまうわけです」(大手小売業のデジタルリーダー)

逆に、Eコマースのリーダーは、ビジネスのより伝統的な分野からオープンに学び、より伝統的なアイデアを取り入れる必要もある。

「弊社の店長たちは、手書きの礼状を顧客にずっと送り続けています。そこで同じことをEコマースの顧客にもやってみたら、大きな成功をおさめたのです」(高級ブランドのデジタルリーダー)

7. 固有のマーケットを知る

マーケットはそれぞれ異なる性質を持つものだ。日本における外資系ブランドにとっては、日本のローカルな消費者を理解し、その習性を知ることがとりわけ重要なことは当然だろう。

「日本のEコマースで固有のもののひとつに、ポイントプログラムがマーケティングツールとして人気があるという点があります」(ネット企業のデジタルリーダー)

そのため、アップル、グーグル、アマゾンは、日本でのみポイント制を導入している。

「ショッピングサイトとしては、中国では淘宝(タオバオ)網が強く、日本ではヤフーが強い。バナー広告の効果が高いのも両者です。ドイツでは、クレジットカードよりもペイパルが好まれ、これがオンラインでの購買行動を左右しています。日本人はポイントが大好きですが、アメリカ人はキャッシュバックを好みます。ソーシャルメディアの広告は東南アジアではとても効果的ですが、日本ではそれほどでもない、などなど。自分がどこでビジネスをしているかによって、やり方をきわめてローカライズしていく必要があることも事実です」(Eコマースのリーダー)

顧客の期待も考慮する必要がある。

「米国では、即日配送は特別なサービスですが、日本では当たり前のこととして期待されています。日本人はまた、一般的に品質と顧客サービスにおいて、高いレベルの満足を期待していて、グローバル企業はビジネスのやり方を日本では変える必要があります」(高級ブランドのデジタルリーダー)

「日本では品質についての期待が非常に高いということは、広く知られたことです。スケーラビリティについての認識も、米国と日本では全く違います。米国本社では、完全自動化に移行するように求められますが、日本ローカルの私のチームは、需要の急増や例外的な顧客対応が必要とされるケースを心配して完全自動化には難色を示しました。日本の顧客は、きわめて細部にこだわり、他国の顧客だったら気づきもしないか気にしないような商品のささいな瑕疵にも文句を言うからです」(日米両国の会社で働いたことのあるシニアなマーケティングリーダー)

日本およびグローバルにおけるEコマースの将来

日本およびグローバルにおいて、Eコマースの次の段階はどのようなものだろうか。

技術の進歩が続いていく中で、最も賢明な企業は、人材とデジタルプラットフォームの両方の強みを活かしていくだろう。

「成功するEコマースは、人とシステムのハイブリッドとなるでしょう。独創力への共感、直感、分析および思いつきといった、人間が秀でていることと、規模、予測可能性、信頼性、データ保管といったシステムが優れていることの組み合わせがますます重要になると思っています」(デジタルリーダー)

「ECで成功するための鍵は、効果的にオフラインとオンラインを組み合わせる能力だと思います。ブランドは、Eコマースを自らが所有するメディアプラットフォームへと進化させ、単に製品を販売することを超えた付加価値を生み出し、テレビや新聞、雑誌といった、いわゆるオールドメディアに頼らないコミュニケーションスタイルを構築する必要があると思います」(国内小売業のデジタルリーダー)

最も有効なEコマース・プラットフォームは、顧客に商品を買ってもらうように「プッシュ」するような形のものではなく、顧客がそのプラットフォームを楽しみ、生活の一部とし、そこに並ぶ商品にワクワクし、そこで得られる情報に基づいて購入意思を固めるような参加型のオンライン環境を作ることであろう。

たとえば、ゾゾタウンのWEARアプリはファッション業界人たちが着こなしている品物をアップロードできるようにしており、ユーザーはそれらを閲覧してゾゾタウンのプラットフォームで購入することができる。

「そのプロセスはすべてとても自然で、その結果WEARはファッションに興味を持つ若者の情報源として主要なファッション誌に対して優位にあるのです」とあるマーケティングリーダーは語った。

デジタル化がますます進化し、普遍的なものになっていく中で、組織の他の部門との統合的な連携を確保しながらEコマースのパワーを最大化できる。そんなリーダーの需要は今後ますます上昇し続けることだろう。

ちなみに、ここで見てきたような変革型デジタルリーダーになるために必要な特性を考えると、企業が最もインパクトのあるデジタル分野のパイオニアを招聘して活躍してもらうためには、柔軟性や確固たる意思とともに、十分なリソースの用意と創意工夫の余地を示す必要がありそうだ。

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